痔について

痔を知る

女性1「トイレットペーパーに血が付いていた」「排便時にお尻が痛い」「座る時にお尻に違和感がある」など経験したことはありませんか?もしかすると痔かもしれません。

日本人の多くは経験したことがあるといわれる痔ですが、はずかしい、血が付いたけどすぐに治る、自分は痔ではないなど、あまり認めたくない病気のため発見が遅れ、症状がひどくなってしまうことが多いようです。

痔は大きく分けて、「きれ痔」「いぼ痔」「痔ろう」の3種類あります。

まずは、痔はどういう病気なのか、どうして起こってしまうのか、どういう症状があるのか、痔を知ることで早期の治療ができるようにしましょう。

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痔はどうしてできるのか?

肛門痔は肛門や肛門周辺にできるお尻の病気の総称として使用されています。

痔は人間特有の病気といわれています。それは、心臓よりお尻が低い位置にあり血液が心臓に戻るのに大きな圧力が必要で、さらに上体の重さもあり人間の構造自体がうっ血しやすいためといわれています。

肛門のまわりには、静脈叢(じょうみゃくそう)といわれる細い静脈がモツレ毛糸のように入り組んでいます。
この静脈は、逆流防止の弁がありません。

そのため、わずかな障害で、血液が逆流して静脈瘤(うっ血)ができるのです。このうっ血が、痔の原因となります。

便秘、下痢、冷え、ストレス、長時間の立ち仕事や座り仕事、妊娠や出産、生理などが痔の原因にあげられます。

肛門の構造

肛門詳細肛門は正式には『肛門管』という長さ3cm程度の器官です。肛門の淵から1.5cm程度のところにあるのが『歯状線』です。体内と体外の境目にあるもので歯のようにギザギザしています。

歯状線から内側(直腸側)は体内となり自律神経に支配されており、知覚神経(痛みを感じる神経)が通っていないため痛みはありません。逆に外側は皮膚と同じように痛みが生じます。

肛門の周りにある筋肉は『内肛門括約筋』と『外肛門括約筋』です。普段、便が漏れないのは、自分でコントロールできない自律神経に支配される『内肛門括約筋』が働いているからです。『外肛門括約筋』は腕や脚の筋肉のように自身でコントロールできます。便を我慢したりできるのはこの筋肉のおかげです。

肛門付近には、便やガスが漏れないようにクッションの役目を果たす静脈が編み目のように張り巡らされた内痔静脈叢があります。このクッションには、肛門という管をピタッと閉めてくれる働きがあり、普段意識しなくても便が漏れないのは、このクッションのおかげでもあります。

ところが、このクッション部分はデリケートにできている分、便秘や冷え、ストレス、老化の影響が受けやすい所でもあります。

便秘と痔

リンパ球便には細菌がたくさんいるため、お尻にとって刺激物となることがあります。

直腸に便をためておけるのはリンパ球などが局所免疫として活躍して防御してくれているからです。

そこに長時間、刺激物である便を肛門付近にためておくと、局所免疫が間に合わず炎症を起こし、痔の原因となることがあります。さらに、便秘で硬くなった便を体外に出すには、いきむ必要があり固い便が粘膜を傷つけたり、傷つけた部分が細菌で炎症を起こしてしまったりします。

便秘は痔の大きな要因の一つとなります。

きれ痔【裂肛(れっこう)】

では、痔についてみていきましょう。まずはきれ痔です。正式には裂肛(れっこう)といわれます。
比較的若い
女性に多いといわれています。

原因

きれ痔固い便が肛門から出るとき肛門の外側にある肛門上皮が切れたり、裂けたりすることで発症します。肛門上皮は弾力性が弱いため切れやすくなっています。

大きな要因は便秘です。便秘になると便が固くなり、無理やり出そうといきんで力をかけます、そこに固い便が肛門を傷つけてしまい痔になります。

下痢も原因になります。水様性の便が勢いよく何度も噴出することで粘膜を傷つけ痔になることがあります。

症状

排便後にトイレットペーパーにつく程度の少量の軽い出血が起こります、中にはボタボタした出血をする場合があります。

初期のきれ痔(裂肛)は排便のたびにピリピリする痛みがありますが、しばらくすると気にならなくなります。深い傷の場合は痛みは強くなり、排便後、ジーンとする鈍痛が続くことがあります。

きれ痔の場合の薬の使い方

肛門狭窄(こうもんきょうさく)

きれ痔(裂肛)の繰り返しでおこります。きれ痔(裂肛)の修復は手足の傷と同じく傷の部分が収縮して周りの皮膚や粘膜を引きつれていきます。肛門は筒状になっているため、裂肛を繰り返しにより、引きつれを繰り返していると徐々に肛門の円周が細くなってしまいます。ひどくなると便が出にくくなるため手術が必要です。 

いぼ痔【痔核(じかく)】

痔核いぼ痔は正式には痔核(じかく)といわれます。日本人が痔で病院に行く原因の多くは、いぼ痔であるとされています。いぼ痔といっても、できる箇所によって2種類に分かれます。歯状線の外側にできる痔を『外痔核(がいじかく)』、内側にできる痔を『内痔核(ないじかく)』といいます。

原因

肛門付近には静脈叢(じょうみゃくそう)といわれる毛細血管が集まってできた弾力があるクッション組織があります。いぼ痔はそのクッション組織がうっ血したり、傷つき出血して盛り上がったり、垂れ下ったりしたものです。

歯状線より内側の静脈叢(じょうみゃくそう)がうっ血すると内痔核になり、歯状線より外側の静脈叢(じょうみゃくそう)がうっ血すると外痔核になります。

原因の多くは排便時の強いいきみや、直腸内の粘膜が弾力性を保てず垂れ下ったりすることです。長時間の同じ姿勢、冷えや妊娠なども原因と考えられます。

外痔核についてはこちら

内痔核についてはこちら

外痔核【いぼ痔】

外痔核は歯状線より外側にできる痔で、ほとんどの場合が強い痛みをともないます。

外痔核

原因

歯状線の外側の静脈叢(じょうみゃくそう)がうっ血し腫れている状態をいいます。皮膚と同じ知覚神経に支配されるため激しい痛みをともなう場合がほとんどです。出血はあまりありません。

排便時に関係なく、重いものを持ったりゴルフのスイングなど、腹圧をかけるような場合に痛みを生じます。

コリコリとした血の塊である血栓ができることがあります。その場合は、血栓性外痔核になっている場合があります。

外痔核の場合の薬の使い方

血栓性外痔核

いぼ痔の一種ですが、肛門周囲の静脈の中で血液が詰まり固まって発症します。血栓ができ激しい痛みをともないます。

 

 

内痔核【いぼ痔】

内核痔は歯状線の内側にできる痔で、基本的には痛みはありません。
この痔は進行度によって症状や処置が変わります。

内痔核原因

原因

歯状線の内側にある静脈叢(じょうみゃくそう)がうっ血しはれている状態をいいます。直腸粘膜は非常に柔らかく排便時に便の摩擦やいきみで傷つき出血し炎症を起こします。

そのため要因と考えられるのは、便秘や強いいきみ、長時間の同じ姿勢、アルコールや刺激物の過度の摂取、妊娠・出産などが考えられます。

歯状線より内側は自律神経に支配され、知覚神経(痛みを感じる神経)が通っていないため痛みはありません。そのため発見が遅れやすい傾向にあります。『脱肛』や出血で初めて気づく方が多い症状です。

『脱肛(だっこう)』とは内痔核が外に飛び出した状態を言います。

内痔核は進行度によって4段階に分かれています。それにより症状や処置が変わります。

ステージ別症状

ステージⅠ 内痔核ステージⅠ

排便時に出血することがある

痔核の脱出はなし

痛みは感じないことが多い

ステージⅡ 内痔核ステージⅡ

排便時に出血することがある

排便時に痔核の脱出はあるが自然に戻る

痛みは感じないことが多いが残便感がある

ステージⅢ 内痔核ステージⅢ

排便時に出血量が多いことがある

排便時に痔核の脱出があり指で押し込まないと戻らない排便時だけでなく重いものを持ち上げたり腹圧がかかると飛びだすことがある

腫れが大きくなり肛門付近に達すると痛みをともなう

ステージⅣ 内痔核ステージⅣ

排便時に出血量が多いことがある

排便と関係なく常に脱出している
内痔核の最終段階、いわゆる脱肛

脱肛自体に痛みはなく出血もないが、粘液などで下着が汚れたりつねに不快感がある

痛みを感じることが多い

内痔核の場合の薬の使い方

嵌頓痔核(かんとんじかく)

痛みが激しい症状です。肛門から飛び出した内痔核が腫れ、飛びだした部分に血栓ができたもの。血栓が皮膚の痛覚神経を刺激、さらに痛みにより内括約筋が刺激されて、筋肉で締め付けられることで痛みが倍増します。

痔ろう

俗にあな痔といわれる。男性に多い症状で女性では少数といわれています。市販薬では治らないのですぐに専門医の受診を受けてください。

原因

痔ろう慢性的な下痢が大きな要因です。肛門の歯状線には、『肛門陰窩(こうもんいんか)』と呼ばれる6~12個くらいの小さな穴があり(個人差があります)、肛門腺につながっています。1ミリ程度の穴なので通常はこの穴に便が入ってしまうことがありませんが、水様性の下痢の場合や強くいきんだりすると、入ってしまうことがあります。通常は局所免疫が働いており炎症が起きないようになっていますが、ストレスや疲労など免疫が落ちていると炎症を起こし、肛門腺が化膿します。これを『肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)』といいます。下痢の方以外にトイレで強くいきむ人や肛門陰窩が深い人がなりやすいといわれています。

肛門腺にたまった膿は圧力の小さいほうへとトンネルを掘り進んでいきます。そして最終的にトンネルは体外につながり、内外をつないでしまった状態を『痔ろう』と言います。

症状

肛門周囲膿瘍になると、化膿した部分が腫れ、強い痛みがあります。また、炎症を起こすため発熱があり、中には39℃以上の熱が出るのが特徴です。痔ろうになってしまうとおしりから膿がでてきます。

肛門周囲膿瘍の時点で切開などで膿を出し治しておけば痔ろうにならないといわれていますが、痔ろうになると肛門腺を取り除かなければ再発するので多くの場合は手術になります。

市販薬では治らないのですぐに専門医の受診を受けてください。

痔対策

日常心がけたい養生訓

  1. 毎日入浴しましょう(患部を清潔に保ち、血流を改善できます。ストレス発散にも効果的です。)入浴イラスト
  2. 野菜、海草等繊維の多い食事にしましょう。 (便の量を増やし便をやわらかくし、便通を改善)
  3. 香辛料は控えめにしましょう。(排便時に患部を刺激します)
  4. 深酒をつつしみましょう。(肝臓に負担をかけ、患部のうっ血をまねく)
  5. トイレはなるべく3分以内にすませましょう。
  6. 適度な運動をしましょう(運動不足は便秘の元です、ストレス発散、生活習慣改善にも効果的です)

便秘や下痢をしない生活習慣を目指しましょう。

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